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中国 チベット人居住地域への再入植を進める

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2002年1月22日
北京(AP)

中国当局は、対チベット政策の批判を抗議団体から受けて一時中断していた入植計画をこのほど再開した。

歴史的なチベット人居住地域の西部遠方に、大半が漢族とイスラム教徒で占める1万7千人の国民を移住させる計画である。

公式情報によると、北京から西部に数千キロは離れた、チベット高原の不毛地帯が一面に広がる地域に位置する青海省の都蘭県にある元労働者施設に、これらの入植者を収容する予定とのことだ。

都蘭県行政局のスポークスマン、ゾ・ハンビン氏は電話によるインタビューの中で、現在この地域の潅漑作業がすすめられており、既存の農地の土壌改良は既に完了していると語った。

西部開発には入植が最も効率的であると主張する中国政府と、これに異論を唱えるチベット亡命政権およびその支援団体との対立の火種となったこの入植が再開されれば、中国は独力で計画を実施するとの公約を果たしたことになる。

世界銀行は1900年代後半、6万人の貧困者救済措置との名目でこの計画に関わり、 入植に必要な費用の約半分−4000万ドル−の対中融資を可決していた。

これに対しチベットの文化擁護を訴える活動家たちは、青海省におけるチベット人の社会環境情勢に悪影響が及び、給水需要が伸び農地が増加することは自然環境破壊につながるとして、この計画を非難。

また、世銀のロビーで抗議デモを行い、十分な事前調査を行った上で再度承認投票を行うよう要求した。 これを受けた世銀は新たな融資条件を中国側に提示したが当局はこれを否認し、2000年7月に融資申請を撤回した。しかし、世銀の最大の融資国である中国が、融資を受けてこれまでに実施した道路やダムの建設、対貧困対策は成功との評価を受けていることから、世銀は今後の対中関係の悪影響を懸念している。

中国が大量の人民をチベット居住地に入植させはじめたのは、経済総量拡大の改革を共産党が始めた1949年以降のことである。

今回の入植計画はこれまでと比較して小規模なものである。しかしながら青海省では散在居住する土着チベット人の人口密度が激減するとの危惧から、このような波瀾が巻き起こった。

チベット擁護活動家たちは、チベット土着の地に中国の主要民族である漢族を大量入植させるという当局の政策に対し、抗議を行っている。

歴史的にチベットの一部であると主張される青海省は、アメリカ・テキサス州よりわずかに広い面積を有するが、人口わずか500万人、土着人口のほとんどはモンゴル人とチベット人の放牧家が占める。

今回の対象地域は乾燥地帯ではあるものの、緑に覆われた峡谷や侵蝕作用によってできた丘があり、雪を頂いた山々に抱かれた非常に美しい地域である。

この計画では、漢族および一般的に回族と呼ばれる民族を入植させ、都蘭郡におけるチベット人人口を23パーセントから14パーセントに減らすことが当初の目的であったが、青海省の官吏は次のように述べた。

「小規模な人数を段階的に移住させる計画に変更されるだろう」

この計画に8千万ドルを割り当てると発表した朱鎔基首相は、昨年9月より入植の準備をすすめているが、最初の一団が移住する日程は未定であると発言。

また昨年には、中国青海省副省長の白瑪氏が次のように発言している。

「入植者の民族構成についての発表はまだないが、政府は世銀の融資計画にかなり固執していた」 これに対し、世銀の対中融資を否認決議に導いたチベット国際キャンペーンの会長、 ジョン・アカーリー氏はAP通信との電子メールのやりとりの中で、当初の予想よりも 都蘭への入植者が小規模になることに胸をなでおろしたと語った。

「この入植計画がある程度進展するとしても、チベット文化の侵略が目的のこのよう な計画に世銀が関与すべきではないというのが我々の変わらぬ見解である」

融資によって自然環境保護と人権擁護が強化されると主張する世銀職員の意見に対しては、「世銀が中国の政策に多大な影響を与えることはありえない」と述べた。

これより以前の融資計画に関わっていた同銀の中国駐在事務所の前局長ピーター・ボッテルリーア氏は、情報が足りないという理由から現在の中国政策へのコメントを控えた。

退職後の現在、世銀顧問を務めるボッテルリーア氏は、同銀の創設後55年の歴史の中でこの融資計画ほど議論を重ねたことはなかったと語ったが、この融資計画は民間人の利益を考慮したものであったとの意見を表明した